介護ハラスメントとは?介護現場のリアルな体験談あり
最近注目されている「介護ハラスメント」。今、日本は高齢化がすすみ、介護が必要な人がどんどん増えてます。その反面、介護士のなり手が増えることはなく、日本は常に、深刻な人材不足です。
『ようやく、介護士になれた!』
『ようやく、新しい職員がきてくれた!』
そうやって喜んだのもつかの間。
『もう無理だ・・・』『やめよう・・・』
と、介護の世界から去っていく人を何度も目にしてきました。
介護は、「3K(きつい、汚い、危険)」にくわえて給料が安い。日々の業務が多く、介護をする人たちはとにかく疲れています。人間関係も悪化して、離職率は相変わらずトップクラス。離職の原因は「人間関係」が第1位です。
今回は、離職の原因の中に、最近話題になっている「介護ハラスメント」について詳しく説明しようと思います。
介護ハラスメントってなに?
「介護ハラスメント」とは、利用者や介護を受ける人が介護士や介護をする家族に対し、いやがらせや不快な思いをさせることをいいます。
「高齢者虐待」ということはよく耳にしますし、介護施設の中でも研修を取り入れたりと、ある程度表面化されますが、利用者や身内からされる行為に関して、介護する側は「我慢しよう」「私が悪い」と自分を押し殺してしまいます。
介護をしていた人たちにアンケートをすると、介護ハラスメントを受けたことが「ある」と答えた人はなんと7割を超えるということがわかっています。
介護ハラスメントの種類
介護の現場で起きる介護ハラスメントには、大きく3つに分けられます。
・身体的暴力
・精神的暴力
・性的嫌がらせ
身体的暴力
介護をする側に対して、身体的な危害を与えたり、いやがらせをする行為です。
(具体例)
・ものを投げつける
・殴る、たたく
・蹴る
・ひっかく、つねる
・つばを吐く
・噛む など
身体的暴力では、介護者側が身体に傷を作ってしまうこともよくあります。私は、腕に青あざやひっかき傷が常にできたりしました。
精神的暴力
介護をする側に対し、尊厳や人格を心ない言葉や態度によって傷つけたり、相手を見下したりする行為です。
(具体例)
・大声で怒鳴る
・威圧的な態度で文句をいう
・無視をする
・「バカ」「死ね」など言葉で攻撃する
・利用料金の支払いの際、床にお金を投げ捨て、拾って受け取るように強要する など
実際私も、「あいつに介護されたくない」と一切触れさせてくれない経験も過去にあります。
セクシャルハラスメント
職員が不快に感じる性的な言葉をかけたり、性的な嫌がらせをする行為です。
(具体例)
・お尻や胸などを触ってくる
・女性のヌード写真を見せてくる
・入浴介助中に性的な話をしてくる
・自分の性器を触らせる など
私が働いていた介護施設では、盲目の利用者さんが、女性職員の介助の際にお尻や胸を触っていたことがあります。
介護ハラスメントの原因
介護現場でハラスメントが起こる原因は、
・1対1になりやすい
・介護サービスに過剰な期待をしている
・認知症の知識が不足している
・介護をする側が「我慢しないといけない」と思っていたり上司に「我慢して」と指導をされる
上記のことが挙げられます。
1対1になりやすい
介護の現場では、ケアを行う場所や体制によって、利用者と1対1になることが多くの場面であります。
特に、身体介助は身体に触れることが多いため、至近距離になります。そのため、暴力を受けたり、セクハラをされたりが増えてしまいます。
介護サービスに過剰な期待をしている
介護をする側が自分の代わりに何でもしてくれると思ってしまうことがあるようです。
事業所・施設で提供するサービスの目的、範囲、方法に関して十分に説明できていないために、利用者・入居者もしくはその家族が誤解や過剰な期待をしてしまうケースもあります。
当たり前にしてもらえると思っていたことができない、してもらえないと分かると暴言や暴力に発展してしまう人もいます。
認知症の知識が不足している
認知症は病気の1つなのですが、暴言・暴力や徘徊、幻覚は認知症の症状(BPSD)であって、必ずそこには原因があります。
その原因をしっかりと見極めていけば、症状はおさまっていくのですが、そこを理解することができず、暴言・暴力という症状を抑えることができないこともあります。
介護をする側が「我慢しないといけない」と思っていたり上司に「我慢して」と指導をされる
介護をしている人は、根が優しい人がとても多いです。それゆえに、「高齢者だから仕方ない」「暴力を振るわさせてしまった私が悪い」と諦めたり、自己嫌悪に陥ってしまう人もいます。
また悪い上司にあたると「利用者”様”なのだから、あなたが我慢しなさい」と相談にのってもらえず、そのまま放置されてしまうケースが多々あります。
介護ハラスメントをなくすためには
研修の導入
介護する側は自分がされていることが「ハラスメント」だと気づいていない場合もあります。介護ハラスメントとはなにか?どう対応しないといけないのか?ということをしっかりと理解してもらう必要があります。そのうえで、問題を表面化させていくことがとても大切です。
また、認知症の知識を増やすことで、職員側が本人のことを理解した上で介護にあたれるため、暴言や暴力といったことがおさまっていきます。そうすることで、介護をする側だけでなく、受ける側もお互い落ち着いた生活を送ることができます。
上司・施設が職員を「守る立ち場」であることを自覚する
私自身、経験したことがありますが、いくら利用者だからといって、人を傷つける行為はあってはならないことです。ただでさえ大変な仕事なうえに、さらにツライ出来事が重なると「やめよう」と退職を考えてしまう職員がたくさんいます。
さらに、上司から「我慢しなさい」と言われると職員自身は身も心もボロボロになってしまいます。職員を守るのも上司の仕事です。大切な”利用者様”ですが、職員がいてくれないと利用者も守ることができません。上に立つ立場の人がしっかりと自覚して、問題意識を持たなければいけません。
相談窓口の設置や、職員面談を行い問題を表面化する
前述したように、介護をする人は心が優しい人が多いです。「自分が黙って耐えればいい」「自分が言ってしまったことが大問題になったらどうしよう」そう考える人も少なくないです。
ハラスメントは、表面化し、早期対策していくことがとても大切です。黙って見過ごしていくと、受けた側はさらに心の傷を深めていき、する側は「これぐらいいいんだ」と軽く考えてしまい、悪循環になります。
気軽に相談できる環境を整えていくことがとても大切です。介護ハラスメントは放っておいてはいけません。早期発見、対策が大切になってきます。
認知症であれば、しっかりと知識を得てどうしたらいいのか、会議を開き職員同士で意見を出し合いながら根本的な解決を結び付けていく。認知症がないのであれば、事業所や上司が、家族や本人にしっかりと話しをする必要があります。
実体験
ここで実際に私自身が受けた「介護ハラスメント」を2件ご紹介します。
実体験①
私が老人保健施設で介護職員として働いていたときの話です。Bさん83歳男性。車いすに乗っていました。
転倒し、右足の大腿部を骨折後入院。退院して自分の施設にやってきました。「Bさーん」と呼ぶと「はいよっ!」と気前よく返事をしてくれる、とても笑顔が素敵なBさんでした。ただ、認知症がかなりすすんでいて、会話がかみ合わないこともしばしば。
Bさんが入所されて1週間。とにかく感情の浮き沈みが激しく、暴言・暴力がとても多い。テーブルの上のものはひっくり返す、自分の靴を投げる、大きな声で叫ぶ、職員に掴みかかる、「バカ」「消えろ」そのようなことを毎日言います。
お部屋に帰ってベッドに横になってもセンサーは鳴りっぱなし、目を離すことができません。職員からは「問題利用者」とレッテルを張られていました。ただ、職員によっては、怒らないときもあるのです。怒らず、落ち着いて身体介護をさせてもらえたのが、私と他の職員1名だけだったのです。
ある日の昼食前。トイレの当番だった私はBさんに「トイレに行きませんか?」と声をかけました。「はいよっ!行こうか」といつになくご機嫌な様子。車いすを動かそうとすると、両足の靴が脱げていたことを見つけました。
「Bさん、靴を履きましょうね」とBさんの前にかがみ、靴を履いてもらおうとした瞬間、Bさんの足が私の顔にクリーンヒット。思いっきり吹っ飛ばされて、倒れる私。
一瞬なにが起きたかわかりませんでした。Bさんが、私の顔面を思いっきり蹴ったのです。急に起きた現実に唖然としている私に、なにか怒っているBさんがいました。
その日、Bさんが唯一受け入れることができるもう一人の職員は休日。怒っているBさんを落ち着かせることができないため、ほかの職員はただただ傍観しているだけでした。
急いで立ち上がり、Bさんをなだめ、ようやく落ち着いてトイレを終わらすことができたのですが、トイレが終わった瞬間に異常な吐き気と、首の痛みがあり、上司に相談し病院に行かせてもらおうとしました。
上司からは「病院に行くのはいいけど、病院ではなにがあったか詳しく言わないでね。労災は出ないから」と言われました。
まだまだ無知だった私は「わかりました」と伝え、適当な嘘をついて受診し、検査をしてもらいました。結果「頸椎(首)捻挫。全治1か月」でした。
職場に戻った私はさっそく上司に報告。上司からは「そうかそうか、大したことじゃなくてよかった。利用者さんは認知症があるから仕方ないね。我慢して。じゃあ仕事戻ってね」
その言葉のみでした。不信感を持ちつつも、当時の私は「ああ、Bさんが悪者にならなくてよかった」とほっとして業務に戻りました。
その後も変わらず、受け入れてもらえるのは私と1名のみ。まだまだ未熟な私は受け入れてもらえることがなぜなのかもわかっていませんでした。
職場内では「Bさん専属」としてBさんの介護だけ行っていましたが、「なんであの子だけ」と嫌味を言う職員もいたり、いじめの標的にされていたこともあります。
激務で、なかなか休日も取れない職場だったので、通院もほとんどできないまま、10年経った今でも、雨の日や気候が悪いときは、いまだに首が痛みます。
その後のBさんは、「うちでは対処できない」と、1か月ほどで退所が決まり、「精神病院」へ入院となりました。
休みだった私ともう一人の職員が、退所当日お見送りに行きました。最後に握った手と、言葉は発さないもののなにかを訴えかけてくるBさんの目が今でも忘れられません。
実体験②

私がグループホームで介護職員をしていたときの話です。
Aさん92歳女性。年相応の認知症はあるものの、長谷川式認知症スケール(認知機能の低下を見るテスト)20点。ぎりぎり認知症といったところです。
おしゃれで、上品で、「おほほほほ」と口に手を添えて笑う育ちのよさそうなAさんでした。記憶もほとんど残るので、職員全員の名前を憶えていて、当時私のことを「〇〇ちゃん」と呼び、とても可愛がってくれていました。
娘さんは県外。「なかなか会えないのよ」と寂しい思いをしていたのか、私のことを「娘みたい」と言ってくれていました。Aさんが入居して4か月。私は介護職員から介護主任に昇進しました。2ユニットを任されることとなり、忙しく走りまわる日々です。
1階のユニットで現場職員だった私は、2階のことを全く知らないため、2階のことを知らなくては…と2階に足を運ぶ頻度が増えていました。今までAさん含め、1階利用者さんと密に関わることができていましたが、その時間は半分以下に。
ある日、Aさんが他職員に「〇〇ちゃん(私)、最近忙しそうね?」と話しかけたそうです。職員が「〇〇ちゃんは、介護主任になったからすっごく忙しいんですよ」と答えたようです。
まだ20代だった私が、介護主任というポジションをしていることに腹を立てられたAさん。「若い女がそんな目上の人の上に立つなんて!」と激怒。その日を境に、Aさんからの攻撃が始まりました。
介護主任とはいえ、現場も入る私。夜勤は、一切身体介護を受け入れてくれません。
「触らないで!きゃー!!助けて!」と大きな声で叫ばれます。入浴介助も「あいつならお風呂に入らない!」と拒否。「私の大事なカシミアのコートがない!盗まれた!あいつに決まっている!警察に言わなければ!」と、携帯電話を持っていたAさんは、本当に警察に通報したこともあります。
夜中に、県外に住んでいる娘さんに泣きながら電話をして「いじめられている」と言われる。何度も娘さんから施設に電話が入り事情を説明しますが、家族から私への不信感がどんどん募っていってました。
「明日にはきっと大丈夫」「来週にはわかってくれる」「認知症だから仕方がない」何度も出勤前に自分に言い聞かせながら、笑顔で明るく職場に行くのですが、状況は変わらず…
日に日にひどくなっていく姿に「私はもう辞めたほうがAさんのためにいいのかもしれない」と思うようになりました。
その状況が2か月続き、急に自分の中の糸がプチンと切れて「退職願い」を自宅で書いていたときのこと。
その当時、ケアマネージャーだったSさん(60歳女性)から電話がありました。「ちょっと今からごはんを食べにいかない?」とのお誘いを受け、食事に行きました。
待ち合わせの場所に到着するとSさんはすでに到着されていて、「とりあえず、座って」と。座った瞬間、Sさんから「よく頑張ったね」とひとこと。その言葉を聞いて泣き崩れてしまいました。
「こんな状況まで、見守っているだけしかできなくてごめんね。本当はもっと早く動くべきだったんだけど、あなたは責任感が強くて頑固な性格だから”大丈夫” ”必要ない”って言うだろうと思って、”助けて”って言ってくれるの待ってた」と。
「でも、私ももうあなたの姿を見るのがツライから、助けさせてほしい。”助けて”って言っていいよ。もう頑張らなくていい」そう言ってくれました。初めて「助けて」と言うことができました。
それからSさんは社長に直談判しに行き状況を説明。社長指示で、私を1階の勤務から外し、落ち着くまで2階の状況把握をするようにと動いてくれました。その後、緊急で家族を呼び出してくれ、本人・家族・Sさん・私・社長と面談を行いました。
介護記録をすべて開示し、状況を説明。私の不手際は一切なく、職員に対するハラスメントとして「退居も視野に入れないといけない」と話ししてくれました。家族は「大変失礼なことをしてしまって申し訳ありません」とすぐさま謝罪。
Aさんは、最初こそ怒っていましたが、最後には「〇〇ちゃんが私のそばを離れていくようで、すごく寂しかった」と謝罪をされました。私も忙しさを理由に1人1人ときちんと向き合えなかったことを反省させられ、謝罪をし、みな泣きながら和解しました。
それから、Aさんと関係が戻り、ようやく笑顔であいさつをしてくれるようになりました。またAさんだけではなく他の利用者ともきちんと関わる時間を少しずつ増やしていきました。
もうその介護施設を辞めましたが、いまだに私の誕生日には、施設から必ず電話をくれ「おめでとう、まだ生きてるよ」と言ってくれます。
実体験を2つご紹介しました。どちらも、認知症の利用者さんであり、私の介護の未熟さゆえに起きてしまったことです。
ただ、それでも自分を守ってくれる存在がいるということが、なんと心強く、救われることか。
そして、私を助けてくれたSさんのような人が、どの介護施設にもいれば、この「介護ハラスメント」は根絶できるのではないかと思います。
まとめ
「介護ハラスメント」という言葉が世間の話題になっています。私たち介護者は、「虐待廃止!研修しろ!」とすり込まれるように指導を受け、虐待をすれば通報される。でも高齢者から受けることには「我慢しなさい」と言われる…
そのような理不尽なことは絶対あってはいけません。高齢者が増え、若者が減っていくこの時代。
悪者を作るわけではなく、守るべきものを守ってほしいと思います。高齢者がいなければ、私たち介護者は困ります。私たち介護者がいなければ、高齢者は困ります。その2つがなければ介護事業者が困ります。
みんなが幸せでいられるために、どうか自分たちがいま守るべきものを考え行動してほしいと思います。誰かのために、1人でも幸せになれるお手伝いができれば、と当サイトは作成されました。
ぜひ1度ご覧ください。1人でも多くの人が明日もまた幸せでいられますように。





















