介護食ってなに?嬉しい話や悲しい話、体験談を含めて詳しく解説
「介護食」という言葉を聞いたことがありますか?普段生活している方々はあまり聞き慣れない言葉だと思います。
人はご飯を食べないと生きていけないわけですが高齢者になると、その食事で命を落としてしまう危険があるのです。
今回は生きていく上でも、介護をする上でもとても大切な「食事」。「介護食」についてお伝えしていきます。
介護食ってなに?
介護食は、噛む力や、飲み込む力が弱くなった方でも食べやすいように調理の仕方や、形、大きさなどを工夫した食事のことです。
介護食は、どこの施設でも必ずあります。形、柔らかさなどもさまざまで、本人の状態によってかわります。
なぜ介護食が必要なのか?
高齢者は歯がボロボロになったり、飲み込むための筋力が落ち、今まで食べていたごはんが噛みにくい、飲み込みにくいと感じることがあります。
シャキっとしたみずみずしい野菜、ジューシーなお肉、ふわふわした魚の身ですら、私たちと同じ調理方法では食べにくくなり、食事量が落ちていきます。
また、命の危険として、「誤嚥(ごえん)」を起こしてしまう可能性が非常に上がってきます。介護食は、そういった「食事量の低下」や「誤嚥」を起こさないためにあります。
食事が危険!誤嚥(ごえん)とは?
誤嚥(ごえん)とは
高齢者は「歯がボロボロになる」「飲み込む力が弱くなる」とお伝えしました。そうなると、「誤嚥」を引き起こしてしまう可能性が高まります。
飲み込んだ食べ物や唾液などが、食道ではなく気道(気管)に入ることがあります。私たちは食事をするとき、食べ物は口→のど→食道を通っていくのですが、食べ物が食道ではなく気管に入ってしまうことがあります。これが「誤嚥」です。
高齢者は自分の唾液でも、のどにつまらせてしまうことがあります。若くても食事をするときにゴホゴホとむせることがありますが、まだ筋力があるので、たとえ気管に入ってもゴホゴホむせると食道に食べ物をもどすことができます。
しかし、高齢者はその機能が衰えているためそのまま気管に入ってしまい、のどが詰まり、呼吸ができなくなって窒息します。
また、食物についている菌や、口の中にいる菌が唾液(よだれやつば)とともに肺に入ってしまい、肺炎を引き起こしてしまうことがあります。これを「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」といいます。
誤嚥性(ごえんせい)肺炎とは?
誤嚥性肺炎とは、食べ物やよだれ、口の中にある菌が気管や肺に入ってしまうと起こる肺炎のことです。みなさんが思う肺炎は、高い熱や咳といった症状が出ますが、誤嚥性肺炎は熱も咳もが出ない場合もあります。
日本では肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者で、70歳以上の高齢者の肺炎の7割以上は「誤嚥性肺炎」といわれています。熱が出て病院に連れていくと「誤嚥性肺炎」と診断され入院する利用者が圧倒的に多いです。
介護食の目安・区分表
この表は、高齢者の飲み込みの状態に合わせ、食事の大きさや柔らかさをわかりやすくした一覧表です。
病院で入院中や、高齢者施設でも、この表を参考にしながら本人の状態に合わせた食事を出すことで、食事の低下、のど詰め、誤嚥性肺炎などの危険をできるだけ減らします。
体験談
知り合いからの話や、自分の過去の経験から「介護食」について2つ体験談をご紹介しようと思います。
体験談1(成功談)
新しい利用者さんが病院を退院し自分の施設に入居してくることになりました。82歳Aさん。とてもやさしくて笑顔がチャーミングなおばあちゃんです。ただ、とてもやせ細っていました。車いすに乗っていて、ほとんど歩けない状態です。食事の形態(かたち・やわらかさ)を病院に聞くと「ミキサー食」と言われました。
朝昼夕の3食すべて、食事はミキサーにかけられドロドロになった食事です。入居されて2週間。食事が思うように進みません。いつも半分以上残すのです。Aさんに聞くと「まずくて食べられない」とのこと。この2週間、食事のときに、Aさんの様子を見ていても、むせがあったりのどに詰まりそうな様子もないことから、「ミキサーをかける必要はないのでは?」という介護職員の意見が上がりました。
ST(言語聴覚士)、医師、看護師、家族に相談し、少しずつ食事の状態を上げてみようという結論が出てさっそくごはんをおかゆに、おかずは細かく刻んだものにして出してみました。「美味しいね、うん、食べれるね」とAさんの笑顔。今まで食事を半分しか食べられなかったのがなんと8割も食べることができました。むせもありません。
それから2週間おきに、各分野の専門士と一緒に会議を行い、最終的に、ごはんは軟飯(普通よりやわらかめ)、おかずは一口大サイズの食事で食べられるようになりました。3食いつも完食。体重も増え、それと同時に筋肉量も増えたようで、歩行器で自分で歩くことまでできるようになりました。「ここにきてよかった」といつも涙ぐまれながら言われます。
体験談2(失敗談)
私が人事異動で新しい施設に管理者として配属になったときの話です。78歳Bさん。自分でスタスタと歩くこともできて、認知症はあるもののとにかく元気。ふくよかな、あたたかみのあるおばあちゃんです。食事はすごく早いペースで食べます。丸飲みする時もあります。
ときどき急ぎすぎてなのかゴホゴホとむせ込み「あーびっくりした!」と笑いながら、すぐに食事に戻る。とにかくパワフルばあちゃんでした。元気なのはいいことなのですが、とにかく食事中むせる。ゴホゴホとひどい咳がでる。職員が「ゆっくり噛んで食べましょうね」とBさんに伝えるように気を使ってくれてはいたのですが、あまりにもむせがひどい。
配属されて初めての会議で「食事形態を一口大または、もう少し小さくしてみては?」と提案しました。でも職員からは猛反発。「Bさんがかわいそう」「来たばかりでなにも知らないくせに」そう言われた私はなにも言えず、そのまま職員の意見を聞き入れてしまいました。
ある日の夜中、夜勤中の職員から緊急の電話が入ります。「Bさんが38.1℃の発熱です」血圧や酸素濃度も問題なく、ひとまずアイスノン(氷枕)を使って様子を見るように伝え翌朝を迎えました。Bさんの様子を見に行くととてもしんどそうにされていていつものパワフルばあちゃんはどこにもいません。
胸の音を聞くと「ゼロゼロ」という音が聞こえます。急いで病院に連れて行きました。結果、すぐさま入院。原因は「誤嚥性肺炎」でした。それからというものの、2週間が過ぎ、1か月が過ぎ、病院からは連絡がなく、こちらから聞いても「退院はまだ先」としか言われません。
お見舞いがてら、病院に話を聞きに行きました。久しぶりに会うBさん。「覚えてくれているかな?」とワクワクしながら戸を開けると、ベッドに横になっているのは変わり果てた姿のBさんでした。点滴につながれ、生気のない目で窓の外をぼーっと見てるBさん。ふくよかだったはずの身体は、骨と皮とはいいませんが痩せ細ってしまっているのは一目瞭然でした。
声をかけても返事もなく、あのパワフルだったBさんはもうどこにもいません。看護師と医師に話を聞きました。”熱も下がり落ち着いてきたので、ひとまず水分からスタートしてみたが、むせがあり中断。ようやく良くなってきて食事をはじめたものの、認知症がすすみ、食べ方を忘れてしまったせいで、食事はほとんど取れていない状況。食事を取れても、また誤嚥や肺炎を起こしてしまうので、今後は口からの食事は難しいかもしれない。
胃ろう(胃に穴を開け、直接栄養を入れる)も考えているという話でした。それから1か月。病院側・家族にお願いし、できる限り食事訓練の時間に合わせて面会に行きました。
食事をとるように声をかけ続けたり、好きな音楽をかけたり、料理の音を流してみたり、美味しそうな食事の写真持って見せてみたり、自分のご飯をもっていき、目の前で食べてみたり・・・・思いつくことはできる限りしたのですが、願いは届かず。
医師と家族と話し合いを行ったようで「胃ろうにする」という結論が出ました。そのときの施設は、看護師や医師が常にいるわけではないので、医療行為が必要な利用者さんは受け入れることができません。なので胃ろうとなったBさんは「退居」となってしまいました。
私があのとき、管理者としてもっと危険だと感じ、職員になにを言われても「食事の形態をかえなさい!」と伝えていれば・・・もっと早く、病院に連れて行って飲み込みの状態を専門の人に見てもらっていたら・・・悔やんでも悔やみきれない、本当に申し訳ないことをしてしまった実体験です。
実体験を2つご紹介しました。ほかにも成功例・失敗例もたくさんあります。
ただこの実体験を通し伝えたいことは、食事は「その人の人生をかえる」ということです。高齢者の残り短い人生が良くも悪くもなるということが少しでも伝わっていたらいいなと思います。
まとめ
私たちは普段当たり前のように食事を取ります。「食べる」ということは、私たち人間は生きていくうえで欠かせないことだからです。高齢者もまた同じですが、高齢になると生きていく上で欠かせない食事までもが命の危険と隣り合わせなのです。
高齢者のひとりひとりに合わせた食事を出すこともまた介護では欠かせないことです。「人」として最期までできるだけ「口から食べる」ことができるように介護士は存在しています。最期まで食事を食べたいですよね?私は、死ぬ前にバウムクーヘンを食べたいです。
胃ろう(胃に穴を開け、直接栄養を送る)になったり点滴で延命する、、生きていることは確かに素晴らしいことですが、誰もができるだけ最期まで口で食事を取りたいと思います。そういう方たちのために、介護士は存在しており、そしてまた、介護食を作る人もその人のためを思って作ります。
最期の最期まで「人として」を大切に今いる目の前の高齢者を助ける専門職の方々がたくさんいることをどうかみなさまに知っていただけたらと思います。
当サイトは、介護を必要としている方たちや専門職の方々のお役に立てればと思い作成されました。お役にたてたなら幸いです。




















